オタクの独り言

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MUSICUS! 感想など

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◇製品概要

 タイトル:MUSICUS!

 ブランド:OVERDRIVE

 発売日 :2019-12-20

 原画  :すめらぎ琥珀

 シナリオ:瀬戸口廉也

 

◇製品リンク

 

◇感想、考察など

音楽って何なんだろうな・・・

OVERDRIVEの最終作、クラウドファンディングで1.3億円支援金を集めた、瀬戸口廉也の最新作、と話題に欠かない作品。内容はどう考えてもフルプラだけどミドルプライス。やってよかったと思えた作品。

発売日に買ったものの、年末年始にやれなかったからGWにやろうと決めていた。まとまった時間に一気にやるべき作品だと分かっていたからね。結果は正解。これは毎晩ちまちまやる作品じゃない。むしろ命を削って一気にやる作品だと思う。

元々、瀬戸口作品が大好きだ。今までで好きなエロゲを10本挙げろと言われたら、そのうち1本はS.M.LのCARNIVALが入る。今ではプレミア化している小説もセットで。相変わらず一気に読み進められるテキストは流石だと思う。

瀬戸口作品でOVERDRIVEといえばキラ☆キラだし、MUSICUS!はキラ☆キラの正統後継作品という扱いだが、キラ☆キラが好きならやるべきかというと微妙に違う気がする。昔キラ☆キラが好きで、それから時間が経ってる人はいいと思う。というのも、MUSICUS!は一般的な大学生や20代には刺さらないと思うから。R-18版とR-15版があるけど、これ高校生がR-15版やってもよく分からんだろ…というのが正直なところ。話が難しいわけではないけれど、共感とか理解が出来ないという意味で。むしろどういう感想になるのか気になる。

作品としてはOVERDRIVEの最終作に相応しいと思う。自分はそこまでOVERDRIVEに特別な思い入れは無く、友人に一人かなりのmilktubファンがいた程度だけど、これは分かる。MUSICUS!はヒロインとくっ付いてイチャラブするようなエロゲ・ギャルゲじゃない。自分の解釈だと、MUSICUS!は「人生とは」という哲学的な問いに対する一つの回答として「音楽」と答える作品だ。OVERDRIVEのbambooは「自分の音楽を届けるために美少女ゲームを作る」としているが、元々は主題歌等のゲーム内楽曲のことを言っていた。MUSICUS!では「音楽」そのものに言及する。ヒロインとくっ付くことなんて二の次だ。「愛なんていらねぇ、音楽が全てだ」と言わんばかりに。エロゲでこれはある種の狂気だと思う。こんな作品は昔に遡ってグリーングリーンから始まって今まであっただろうか。そう考えるとMUSICUS!が最終作というのは納得がいく。

 

もちろん、盲目的に肯定しているわけじゃない。ゲームとして不満もある。以下は不満があったところ。あくまで個人の感想なので、「個人的には」というのが頭につく。

 

■ガヤがテキトー過ぎる

大した事ないけど気になった。だって「ライブハウス」「駅のホーム」「居酒屋」全部同じなんだもの。途中で女の声で「ヘーイ!」って言ってるのがめっちゃ気になる。いやお前駅のホームだぞ…

 

■攻略順について

読み物としてプレイしているから、選択肢はもっと少ない方が嬉しかった。というか選択肢が多い。それだけ分岐があるのかというとそんなことも無かったし。そして攻略順も固定して欲しかった。たぶん

 

弥子 → めぐる → 澄 → 三日月

 

がベストだと思う。三日月が終わってから尾崎さんに戻ったけど、先にやっておきたかったなぁという感想。

 

■一部不快なキャラについて

これは物語を始めるためにも、作品を膨らませるためにも必要なのだろう。しかしどうにも釈然としない。「憎めないバカ、愛されるバカ」とか、キャラの成長が見られたならいいけど、ただウザいだけとか胸糞悪いだけだった。じゃあ一発ぶん殴ってスッキリした方が良かったのかというと、それはそれでチープなものに成り下がりそうだったし、結局は胸糞悪いままプレイせざるを得なかった。これも感じ方次第なんだろうけど、もう少しバランスが良くてもなぁというのがあった。

 

以下、各ルートについて

 

■弥子

一番きれいな話だったのかな?なるほどこれが青春か…という感じで。共同制作ってのはいいもんだねぇ。作中だと佐藤さんがめっちゃいい子なんだけど、もう少しあの子の話があって欲しかったなぁ。見た目ギャルだけど世話焼きで家庭的って、ぬきたしの奈々瀬に被ってるけどやっぱりいいよね。

このルートで一番印象的だったのは主人公のセリフ。

「もし生まれ変わりがあるのなら、次の人生ではバンドに賭けてみたいと思うけどね。でも今回はそれを選ばない。」

「おい、これ絶対最初にやるべきだっただろ…」となった瞬間。上にも攻略順を書いたけど、尾崎さんを先にやっておくべきだった。三日月が登場しない代わりに胡桃が居たけど、その場合三日月はどうなるんだよっていう、一人のルートを選んだら別のヒロインどうなるの的な葛藤があった。尾崎さんも胡桃も個人的に何とも思わなかったからかもしれない。いやほんと、佐藤さんが幸せになってくれればそれでいいよ。

 

■めぐる

きれいな話だったけど、一部ご都合主義的な展開があったのは否めない。しかし他で一切語られないめぐるの謎が明らかになったし、普通に楽しめた。めぐるを知ったうえで三日月に進むと印象が変わるだろうし、三日月の前にめぐるをやっておけばよかったと後悔。めぐる自身もいいキャラだし、終わり方もスッキリしてた。

 

■澄

誰だよてめーは(画像略)って感じ。用意されたルートの中でも、まぁそんな位置づけだろうと最初から分かっていたので何とも・・・。何となく最初からオチが読めて、実際にそれが当たってしまった。そういうこともあって、本当に、無表情で、何も感じることなく終わった。因みにこのルートに限らず個人的胸糞キャラは

  • 香織
  • 金田
  • 謎の大学生

になる。尾崎さんルートの金田はまだマシだったかな?河川敷に呼び出したあいつは小者臭がしてたから何とも思わなかったけどね。いやー、澄は無理っす。良い子なのかもしれないけどね。

 

■三日月

トゥルーという言い方が適切なのかは分からないけど、思いっきり精神を揺さぶられた本筋のルート。そして一番考えさせられたルート。とても良かった。たぶん途中で終わったら凡作だったと思う。この終わり方、そしてエンディング最後の三日月でかなりやられた。終わったら軽く放心してしまった。

 

「ライブは生もの」という表現は言い得て妙だと思う。聞くだけだったらデータだけでいい。データの方が正確に演奏された曲になる。しかしライブに行く人は多い。それはライブにはデータに無いものがあるからだ。ライブハウスに限らず、ライブに行ったことがあれば現地の熱気にあてられて興奮するのが分かると思う。ここには音以外の「モノ」があって、それがその曲を昇華させる。

作中でもあるように、確かに音楽には音と直接関係ないことによる「まやかし」で騙している一面はあるのだと思う。けどやはり究極的には自分が良いと感じられたらそれでいいのだろう。そこには小難しい理屈はなく「理由なんてどうでもいいから好き」が全てだ。例えば作曲家が人間としてクズでも曲が良ければそれでいい。

花井、三日月、めぐる。音楽が無くては生きていけない者たちの、それぞれの音楽観、人生観があった。作品を通じて感じたのは「今を楽しく生きよう」ということ。彼ら、彼女らにはそれが音楽だった。

 

少し思ったのが、MUSICUS!のクラウドファンディングが始まった時に大々的に「OVERDRIVE最終作!!」という宣伝があったけど、これもひとつの売り上げのための「まやかし」だったのかな?ということ。だって最終作だと感慨深いものもあるし、期待するでしょ。体験版もやらずに買った人も多いはず。発売後に「実はこれ最終作なんだぜ」と発表したらまた変わったと思う。ここら辺を行動で示すあたり少し面白いと思った。自分は信者というわけじゃないし、実際に作品として「良かった」と思えたから、それこそどうでもいいけどね。実際に支援金1.3億円ってとんでもない数字だと思う。OVERDRIVEは12年間お疲れ様でした。

 

作品を通じて人生観を考えさせられた。年末に凄い作品が出たもんだなぁと改めて思った。